小児脳腫瘍

・小児脳腫瘍とは:

小児脳腫瘍は種類が多く、病理診断が難しい上に標準的な治療が定まっていない腫瘍も数多くあるため、診断や治療に関してとても高い専門性が必要です。我々は、国内国外を問わず、報告されている治療法の中で最も治療成績がよく、かつ信頼のおける治療法を選択しています。小児脳腫瘍治療の困難なところは、腫瘍が脳室内や松果体部など脳深部に多く生ずるために手術が難しいことや、有効な治療方法がときに発達途上の脳機能に悪影響を与え、治癒率(ちゆりつ)の向上と脳機能の健全な発育が平行しないことです。小児脳腫瘍の2/3は悪性腫瘍であるため、手術のみでは終わることは少なく、術後に化学療法や放射線治療が必要になることが多くあります。それぞれの治療の重要性も様々で、化学療法や放射線治療が効かないために手術が重要な役割を果たす腫瘍もあれば、逆に化学療法などが非常に良く効くために手術で摘出する必要のない腫瘍もあります。手術を行う場合には、術前にどのような種類の腫瘍であるかを予想し、それに従い適切な手術を行います。そして、手術が終わったら、まず診断のために、脳腫瘍を専門とする病理の先生に正確な診断をしてもらいます。病理診断に従い、必要であれば化学療法や放射線治療を行います。小児脳腫瘍の診療においては、病理診断科、小児科と放射線科と脳神経外科の密接な協力が必要です。当科の治療はこの点にも十分に考慮し、現状をよく説明させていただき、最適の治療方法を選択しています。

以下に、当院で治療している代表的な小児脳腫瘍について説明します。

*胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)

精子や卵子のもとの細胞が腫瘍になったものと考えられていますが、脳・脊髄においても発生(はっせい)することがあります。松果体(しょうかたい)部や神経下垂体(しんけいかすいたい)部など脳室(のうしつ)近くに発生することが多く、松果体部腫瘍では、水頭症(すいとうしょう)による頭痛、嘔吐や目を動かす中枢(ちゅうすう)が圧迫されるために物が二重にみえるなどの症状が出現します。下垂体機能が障害されることも多く、異常に尿が多くなる尿崩症(にょうほうしょう)という症状を引き起こすこともあります。胚細胞腫を、ジャーミノーマと呼ばれる治療への反応性が高い群、中等度悪性群(未熟奇形腫(みじゅくきけいしゅ)など)、そして高度悪性群(絨毛癌(じゅうもうがん)、卵黄嚢腫瘍(らんおうのうしゅよう)、胎児性癌(たいじせいがん),これら悪性度の高いものが主体の混合腫瘍)に分類し、それぞれの群に応じて手術・放射線・化学療法の強度を変えてきめ細かく治療を行っています。当院では、日本中枢神経胚細胞腫研究グループによる初発の頭蓋内原発胚細胞腫に対する放射線・化学療法第II相臨床試験に参加しています。また、腫瘍が再発した場合には、放射線治療を追加できるかどうかを検討し、大量化学療法が有効であると考えられる場合には、小児腫瘍科と協力し治療を行っています。

*髄芽腫(ずいがしゅ)

小脳虫部(しょうのうちゅうぶ)から第四脳室内に発生することが多く、しばしば髄液循環(ずいえきじゅんかん)を妨げるために水頭症が生じます。頭蓋内(ずがいない)や脊髄(せきずい)に播種(はしゅ)することが多い腫瘍です。化学療法と放射線治療が比較的に良く効くため、脳幹(のうかん)など重要な部分にしみ込んでいる場合には、1.5cm2以下の残存であれば無理に全部の腫瘍を取り除く必要はないと考えられています。治療においては、手術で可能な限りの腫瘍を摘出したのち、全脳脊髄(ぜんのうせきずい)に放射線治療をおこない、大量化学療法を併用することが効果的ということがわかっています。手術摘出ののち、年齢、残存腫瘍(ざんぞんしゅよう)や播種の有無により標準リスク群、高リスク群に分け、放射線腫瘍科(ほうしゃせんしゅようか)の協力のもと、それぞれのリスクに応じた治療を行います。現在、大量化学療法に関しては、末梢血幹細胞移植を行いますが、これに習熟した小児腫瘍科(しょうにしゅようか)に協力してもらい、一緒に治療を行っています。また、3歳未満の小児に対しては、放射線治療後の脳障害に非常につよく影響するといわれており、放射線治療をさける化学療法を小児腫瘍科とともに行っています。

*上衣腫(じょういしゅ)

脳室の壁を作る上衣細胞から発生した腫瘍で、小児や若者にできることが多い腫瘍です。上衣腫は、とにかく手術による可能な限りの全摘出をめざします。時に重要な脳神経にくい込んで広がっているものもあり、残存した腫瘍や、悪い性質の腫瘍に対しては放射線治療を行います。化学療法の効きづらい腫瘍ですが、手術による摘出を補助する形で化学療法と組み合わせて治療することもあります。我々はJCCG(日本小児がん研究グループ)による治療法(小児上衣腫に対する術後腫瘍残存程度と組織型によるリスク分類を用いた集学的治療第Ⅱ相試験)に従い治療を行っています。また、髄芽腫とともに日本全国で遺伝子の解析が進められており、この分析をてがかりに、今後有効な治療を開発することが望まれます。

*毛様細胞性星細胞腫

脳室の壁を作る上衣細胞から発生した腫瘍で、小児や若者にできることが多い腫瘍です。上衣腫は、とにかく手術による可能な限りの全摘出をめざします。時に重要な脳神経にくい込んで広がっているものもあり、残存した腫瘍や、悪い性質の腫瘍に対しては放射線治療を行います。化学療法の効きづらい腫瘍ですが、手術による摘出を補助する形で化学療法と組み合わせて治療することもあります。我々はJCCG(日本小児がん研究グループ)による治療法(小児上衣腫に対する術後腫瘍残存程度と組織型によるリスク分類を用いた集学的治療第Ⅱ相試験)に従い治療を行っています。また、髄芽腫とともに日本全国で遺伝子の解析が進められており、この分析をてがかりに、今後有効な治療を開発することが望まれます。

*その他の腫瘍

小児脳腫瘍は種類が多く、悪性神経膠腫(あくせいしんけいこうしゅ)、脳幹部神経膠腫、松果体芽細胞腫(しょうかたいがさいぼうしゅ)などの悪性腫瘍や、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、脈絡叢乳頭腫(みゃくらくそうにゅうとうしゅ)など良性でも治療が必要になるものなど、治療方針も非常に多彩です。当院には経験豊かな小児脳腫瘍を専門とする医師がおりますので、詳細は担当医にご相談ください。
小児腫瘍左:脳幹部神経膠腫  右:頭蓋咽頭腫

 
ページの先頭へ トップページへ