埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科 | 小児脳腫瘍

対象疾患
小児脳腫瘍

・小児脳腫瘍とは:

小児脳腫瘍の2/3は悪性腫瘍(がん)で、小児癌による死亡の第1位は脳腫瘍です。小児脳腫瘍は成人を含めた全脳腫瘍の8%にすぎませんが、種類が多く、それぞれの腫瘍の種類毎には患者さんの数が少ないため、大規模な臨床試験を行うことが不可能で、従って標準治療ガイドラインを作成することがむずかしいのが現状です。
このような中で、当科の脳腫瘍治療研究グループは1995年に始まった厚生省(現厚生労働省)がん研究助成金による「小児悪性脳腫瘍治療方法の確立」研究の主研究組織として参加し、長らく胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)と髄芽腫(ずいがしゅ)の治療方法を検討してまいりました。さらに、小児脳腫瘍の治療においては、小児科と放射線科と脳神経外科の密接な協力が必要です。脳神経外科が丁寧な手術を行って、障害を残さずに見える範囲の腫瘍を全て取り去り、それでも残ってしまう悪性細胞には、あるときは放射線を照射し、あるときは大量化学療法を行って、がんを完全にやっつけてしまうことが必要です。
小児脳腫瘍治療の困難なところは、有効な治療方法がときに発達途上の脳機能に悪影響を与え、治癒率(ちゆりつ)の向上と脳機能の健全な発育が平行しないことです。当科の治療はこの点にも十分に考慮し、現状をよく説明させていただき、最適の治療方法を選択しています。

以下に、当科で治療している代表的な小児脳腫瘍について説明します。

*胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)

精子や卵子のもとの細胞が腫瘍になったものと考えられていますが、脳・脊髄においても発生(はっせい)することがあります。松果体(しょうかたい)部や神経下垂体(しんけいかすいたい)部など脳室(のうしつ)近くに発生することが多く、松果体部腫瘍では、水頭症(すいとうしょう)による頭痛、嘔吐や目を動かす中枢(ちゅうすう)が圧迫されるために物が二重にみえるなどの症状が出現します。下垂体機能が障害されることも多く、異常に尿が多くなる尿崩症(にょうほうしょう)という症状を引き起こすこともあります。胚細胞腫を、ジャーミノーマと呼ばれる治療への反応性が高い群、中等度悪性群(未熟奇形腫(みじゅくきけいしゅ)など、そして高度悪性群(絨毛癌(じゅうもうがん)、卵黄嚢腫瘍(らんおうのうしゅよう)、胎児性癌(たいじせいがん),これら悪性度の高いものが主体の混合腫瘍)に分類し、それぞれの群に応じて手術・放射線・化学療法の強度を変えてきめ細かく治療を行っています。当科では、日本中枢神経胚細胞腫研究グループによる初発の頭蓋内原発胚細胞腫に対する放射線・化学療法第II相臨床試験に参加しています。

*髄芽腫(ずいがしゅ)

小脳虫部(しょうのうちゅうぶ)から第四脳室内に発生することが多く、しばしば髄液循環(ずいえきじゅんかん)を妨げるために水頭症が生じます。頭蓋内(ずがいない)や脊髄(せきずい)に播種(はしゅ)することや、体のほかの部位に転移(てんい)することも多く、脳幹(のうかん)など重要な器官(きかん)にしみ込んで成長している場合は手術をおこなっても腫瘍を残さざるをえません。治療においては、手術で可能な限り全ての腫瘍を摘出したのち、さらに全脳脊髄(ぜんのうせきずい)に放射線治療をおこない、大量化学療法を併用することが効果的ということがわかっています。手術摘出ののち、年齢、残存腫瘍(ざんぞんしゅよう)や播種の有無により標準リスク群、高リスク群に分け、放射線腫瘍科(ほうしゃせんしゅようか)の協力のもと、それぞれのリスクに応じた治療を行います。現在、大量化学療法に関しては、末梢血幹細胞移植を行いますが、これに習熟した小児腫瘍科(しょうにしゅようか)に協力してもらい、一緒に治療を行っています。また、3歳未満の小児に対しては、放射線治療後の脳障害に非常につよく影響するといわれており、放射線治療をさける化学療法を小児腫瘍科とともに行っております。

*上衣腫(じょういしゅ)

脳室の壁を作る上衣細胞から発生した腫瘍で、小児や若者にできることが多い腫瘍です。上衣腫は、とにかく手術による可能な限りの全摘出をめざします。時に重要な脳神経にくい込んで広がっているものもあり、残存した腫瘍や、悪い性質の腫瘍に対しては放射線治療を行います。化学療法の効きづらい腫瘍ですが、手術による摘出を補助する形で化学療法と組み合わせて治療することもあります。また、髄芽腫とともに日本全国で遺伝子の解析が進められており、この分析をてがかりに、今後有効な治療を開発することが望まれます。

*毛様細胞性星細胞腫

比較的ゆっくりと成長するものが多く、小脳などの摘出可能な部位にできるものは手術治療のみで治るものもあります。脳幹・視神経(ししんけい)・視床下部(ししょうかぶ)にできることも多く、この場合、場所が危険であるために、手術で全摘出することはできませんので、症状に応じて化学療法を行います。また,播種(はしゅ)するもの、悪性の性質をもったものなど、たちの悪いタイプも時々みられますが、一方逆に年齢とともに自然に小さくなるものもありますので、画像診断および病理診断(びょうりしんだん)が大変重要となります。当科では、月に1回、脳腫瘍病理カンファレンスを行うなど、脳腫瘍の病理を専門にした病理医と密に相談しながら最前の治療を検討しています。

*その他の腫瘍

小児脳腫瘍は種類が多く、悪性神経膠腫(あくせいしんけいこうしゅ)、脳幹部神経膠腫、松果体芽細胞腫(しょうかたいがさいぼうしゅ)などの悪性腫瘍や、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、脈絡叢乳頭腫(みゃくらくそうにゅうとうしゅ)など良性でも治療が必要になるものなど、治療方針も非常に多彩です。当科には経験豊かな小児脳腫瘍を専門とする医師がおりますので、詳細は担当医にご相談ください。
小児腫瘍左:脳幹部神経膠腫  右:頭蓋咽頭腫

 
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